7月にロバート・レーさんが来日。昔話はどんな真実を語っているのだろうか。そんな問いかけをもとにえずこシアターのメンバーはさまざまな昔話を取り上げ、自力で寸劇化する作業を続けました。それをつなぎ合わせて何か大きな真実を語ろう。それが公演への主軸になりました。

11月1日・2日の本番の15日前に、イギリスの若手演出家イクバル・カーンさんがえずこホールにやって来ました。集中して作り上げていく2週間の稽古。ウェストエンドで活躍している俳優経験もあるイクバルさんは、すばらしい指示でみるみるえずこシアターのメンバーを別人のように成長させました。

昔話が語る真実が、さまざまな悩みをかかえる登場人物たちを少しずつ前向きに変えていくというストーリーが、メンバーの考えたさまざまな断片からつむぎ出されていきました。さまざまなキャラクターへの早変わりや、効果音を出しながらの演技など、新しい試みにもチャレンジしました。


演出 イクバル・カーン

演出: イクバル・カーン

<物語ついて>The Story

The story of the play is the story of us all; ordinary people, living ordinary lives that conceal pain, joy and great beauty.

We all struggle with our modern problems and often haven't the time, imagination or courage to stop and listen to what the past might teach us.

Ezuko Theatre has, with extraordinary honesty, put their own tales on stage. With great skill they have woven in mythical episodes that entertain and transform the spectator.

They have not been afraid to confront the unpleasant and confusing realities of our times.

But, ultimately, our salvation is each other. Only together can we raise our voices in joyous harmony.

Director Iqubal Khan


 このお芝居の物語は私たち、つまり痛みや喜びや偉大な美しさを見せることなく普通の毎日を生きている普通の人々の物語です。

私たちはみんな日々の問題に苦しんで、過去が私たちに教えてくれることを立ち止まって聞く時間や想像力や勇気をしばしば持たないでしまっています。

 えずこシアターはすばらしい正直さで彼ら自身の物語を舞台にあげたのです。すばらしい技術で見る者を魅了し変えてしまうような神話を織り上げたのです。

心地よくないことや現実の混乱に立ち向かうことを彼らは恐れてはいません。

 結局私たちは互いに助け合うのです。楽しいハーモニーの中、私たちは一緒にいることで声をあげることができるのです。
演 出 イクバル・カーン

 

 


<創作過程について>The making of this production

 今回の作品は、昨年の11月からえずこシアターがワークショップを重ね、自分たちの日常から抽出し演劇的に構成してきたさまざまなかけらをつなぎ合わせて構成したものです。

昔話は全部で互いに語り部となり16の物語を共有しました。 それぞれの物語が語っていることがどんなことなのかを話し合い、みんなで自分たちが考案した楽器で効果音を出しながらお芝居にしました。

その中から今回は「赤い箱白い箱」(仙南に伝わる『花咲か爺』)、「つる女房」、「かさ地蔵」、そして「ももたろう」を物語に使いました。また宮沢賢治作「よだかの星」、浜田広介作「泣いた赤鬼」を一部引用しました。

また、現代を生きる私たち自身の生活にも物語を見つけ出し、それが各所に散りばめられています。そんな物語が今を生きる私たちに少しだけ目を開かせてくれる。そんな物語に構成したのが「仙南今昔語り三文オペラ」です。

 海外からおいでいただいた演出家とたった三週間で作品をつむぎ出すというこの貴重な経験は、そう簡単にできるものではありません。1カ月前には幕が開くかどうかをだれもが確信できない状況でした。

しかし、もはや「奇跡的」と言ってもいいことが起こったようです。短期間にメンバーひとりひとりが魔法のようにカーン氏によって力を引き出されていきました。信じられないようなスピードでした。英語での演出も、13歳から68歳までのメンバー全員がほとんど理解していたから不思議です。

 すてきな経験をさせてくれたイクバル・カーン氏に心から敬意を表し、感謝いたします。
 また、すてきな出会いを私たちにたくさんもたらせてくださったコーディネーターの中山夏織氏、そして通訳をしていただいたみなさま、演出家の交代に伴いご協力いただいたイギリスの演劇人の方々、すばらしい力と技術で支えていただきましたスタッフやボランティアのみなさま、メンバーのご家族、関係の各機関のみなさまに、心から御礼を申し上げます。

助演出/脚本  吉川 由美

 


いろいろとエキサイティングな体験を経たえずこシアター・メンバーの感想をご紹介します。


渡辺睦
お芝居に対してはずっと漠然としたあこがれがあり、「いつか何かの形でたずさわってみたい…」と思っていました。そのはじめの一歩が、こんな素敵なプロジェクトに参加できた事、本当にうれしく思います。

何もかも初めての事ばかりで「私にできるのか…?」と不安もありましたが、えずこへ通う日々は、多忙きわまりないながらも心はとても充実していました。

先生やメンバーの皆さんやスタッフの方々との関りの中で、ほんとにたくさん、たくさん学ぶことがありました。
イクバルさんがいらしてからは特に皆の一致団結とにかく一生懸命やろうという思いでした。自分の役目が果たせたのかどうか分かりませんが、公演前の緊張感、集中した2時間の公演中(そのわりには細かいヘマをやりましたが…)そして幕が下りた時の感動は言葉で表すことができない程でした。

見に来てくれた家族や友人、知人から驚く程の嬉しい言葉をもらいました。(元気になったよ、感動したよ、涙が出てきたよ、何か始めたいと思った、勇気が沸いてきた、皆の楽しさが伝わってきた…などなど)
"楽しそうだったね"っていう意見が多かったのもまた嬉しい事です。

とにかくえずこシアターでの毎日はエキサイティングでファンタジックな日々でした。
イクバルさんの大きな愛、皆さんの暖かい心、ありがとうございました。



高橋奈津樹

今年は、えずこシアターの一人として公演を終えたけど、全然緊張しなかったし、大きな失敗もなかったので良かったです。シアターの中で最年少でしたが、みんなと仲良くなって公演をむかえたので緊張しなかったと思いました。

来年は中2なので、受験1年前ですが、また講演に出て中3も出たいと思います。
でも今年は「シロ」が人気で自分でもおどろきましたが「シロ」みたいな役は勘弁してもらいたいかな。イッキーさんは楽しく演出してくれて良かったです。もう1回してほしいと思いました。



小高智

僕が26歳のとき何かゼロから始めたいと思った。それが演劇だった。27歳になった11月、2度目の舞台に立たせてもらった。

これが直接の原因ではないけれど、最近少し考え方が変わった。目に見えない変化でも、実は僕にとって大きな変化だった。そういう意味でも僕にとって「えずこシアター」は大切だった。事実、とても不思議というか快適な空間であり、有意義な時間を共有できたと思う。

ここを構成している多様な人々を見てあらためて世界の多様性を思った。最近僕の中では「多様性」というのが流行りなのだ。何か意味不明の文章になってしまったが「えずこシアター」とその近辺で起こった出来事は僕にとってとても大きなものなんだろう。そして言わせて下さい。「みんなありがと〜」って!



村上可ズイ

今回の演劇に正直言って出られるとは思わなかった。関係者の皆様に色々助けて頂かなかったらとても無理でした。本当にありがとうございます。又吉川先生、遠くより来て指導してくださいましたイッキーさんと中山さん、野呂さん、本当にありがとうございました。知人達からも、涙も出て来たし、又笑わせたりとても良かったとほめられました。

昨日(11/5)Aコープに行った時、見知らぬ女性より「えずこシアターに出ていた方ですよね。とてもすばらしかったですよ」と言われました。私自身もっともっと学ぶ事沢山あるのでこれからも頑張ります。又イッキーさんに来て頂けたらと念願致します。

本当にありがとうございました。



今野栄子

昨年からのワークショップでいろいろなことを学べてすごく良かった。さびついた頭と心と体に徐々にオイルがいきわたってなめらかに動けるようになった気がする。すばらしい時間をすごすことができ本当に良かった!

最終段階でまたすばらしい演出家イッキーさんに出会え、わかりやすく演技指導をしていただけ、これまた本当によい経験になりました。

このすばらしいプロジェクトに参加できたこと誇りに思います。これからもどうぞよろしくお願いします。



二木葉月

今回は久しぶりに参加したせいか、ワタワタしたまま終わってしまった気がします。それでも短い間でしたが、イッキーさんの演出が一味違っていて(オーバーアクション?)で、練習を見ているだけでもとても楽しかったです。

音の方でいうと、当日まで音が足されたのでどうなることかと思いましたが、何とか出し切れたので嬉しかったです(ホントに…泣)

小さいことを並べれば、ちょっと悔しいところもありますが、大きく見れば成功だったのではないでしょうか?



渡辺秀剛

今年は三度目なのであまり緊張しなかったです。今年は後輩がいるので、先輩としては恥のない劇をしました。いろいろと工夫して劇をすすめてきました。

イッキーさんにはいろいろなやりかたを教えてもらって勉強になりました。



大沼春樹

今回は外国人の演出家のイッキーさんに演出してもらいました。日本人じゃなく初めての外国人だったので、まるで自分が映画に出ているみたいでした。三年連続「ひとみちゃん」がらみだったので次は女子とのかかわりはゼッタイヤダ。多分来年もやると思いますが、キャストによってはやらないと思います。

今回はセリフがべらぼーに少なかったのがショック!でした。来年はリズムに乗るだーにゃ。



日下博幸

今回は当初からイギリスから演出家が来日すると言う事で、とても不安でした。(ある程度予想はしてましたが…)

いろんなバタバタがあってイクバルさんの来日…
突然道具を作れと言われてチョットビックリ…
出来上がった道具を誉められたのは嬉しかったな(英語は解らないけど)
日本語で次の工程を言ったら「OK」の返事がイクバルさんから返ってきたのにも驚いたけど…

公演については初日はチョットミスして凹んだけど、2日目はミスもなく出来たしまずまずでしょうか?しいて言えば、影絵をもう少し練習したかった(公演前日からの練習だったので)

無事、公演が成功して良かったです。(毎日1日目が上手に出来ると2日目が…)
イクバルさん、中山さん、野呂さん、よっし〜その他大勢の協力していただいた方に感謝…ありがとう



板橋隆之

今回の公演はみなさんのガンバリがすごかっと思います。(もちろん、いつもガンバってますが、今年はいつにも増して)

キャストの方々が台本をもらって、次の稽古の時にせりふを覚えて来ているのは、僕の知る限り前代未聞の快挙だったと思います。シアターのスタッフだけではなくすばらしいプロフェッショナルスタッフの方々の協力もとても大きな力になりました。
みなさんスゴイネ!!さすがだね!!

音響の立場での感想は、まずキャストのみなさまへ新人の方と旧人類の方とでは声の出し方(聞こえ方)が全然違う事が興味深かったです。やはりキャリアの差という物はあるんですね。

自分に対しては、初のマイク操作で最初は全然ついていけませんでしたが、短い練習期間で出来る限りのことは出来たと思います。本番はけして完璧と言える出来ではありませんでしたが、今後の活動に役立つ良い経験になりました。

最後に演出家イッキー、あなたは偉大でした!!
ありがとう!!



岡崎仁美

本格的な演劇に参加したのは初めてでしたが、フレンドリーな雰囲気の中でとても楽しく参加させてもらいました。長ゼリフを覚えるのが大変で、本番を楽しみにしている友達や家族をまきこんで練習し、楽しみを半減させるわけにもいかず、一人お風呂で練習したりもしていましたが、そんなことも良い思い出です。

本番ではたくさんのお客さんが目の前に居るのを見てあぶなく頭がまっしろになる寸前でしたが、無事大成功を納められたので良かったです。それにとっても楽しかったのです。大勢の人が自分を見ているんだと思うと、まるで自分が映画のヒロインになったみたいでした。

来てくれた友達もすごく楽しんでくれたようで、公演の後に会ったときは目がキラキラしていました。とってもステキな時間をくれた皆さん、ありがとうございます!



加藤百合子

とても楽しい経験でした。手法がワークショップ形式で、かつ新人仲間も多かったので早い時点で馴染め、ベテランのみなさんの暖かいアドバイスや励ましを受けながら、今までに経験したことの無い事を新鮮な気持ちで楽しむことが出来ました。

見に来てくれた友人達も出演者自身がみんな楽しそうに演じていた事がとても印象的だったと言っていました。一緒に創り上げた仲間の方々、そしてスタッフの方々に「ありがとうございました」の気持ちを伝えたいと思います。

ロバートさん、イクバルさんとタイプが違うお二人のディレクターの指導を受け、ディレクターによって役者の演技がこんなにも違ってくるのを知ったのも、良い経験でした。

そして、一番うれしかった事は幕間で出番を待っている間に秀剛君が「芝居うまいっすね〜。」と言ってくれたことです。思いがけない事でびっくりでしたけど、それで、来年も絶対参加する!気持ちが固まりました。今後とも、よろしくお願い致します。



伊藤裕子

追い込まれていた所から集中して作った舞台だったのでやり遂げたという思いもあるにはある、が、夢の中の出来事だったという感じの方が強い。可能ならば、もっと地に足がついた状況で最初からイッキーと作品を作ってみたいものだ。

たちまちメンバーの名前を覚え、ぐんぐんシアターの中に入ってきてくれたイッキーが私には救世主に思えたし、輝いて見えた。そして、もしかして日本人の気質や文化を知り尽くしているのかと思えるほどだった。
 学ぶことも多かった。人柄を理解して人を生かすこと200%の演技で手本を示すこと。さまざまな通し練習の仕方。などなど。

ワークショップの最中は欠席も多く、反省している。ふと気づくと自分がやっていた昔話などが台本に残らず、出番がどんどん減っていった。そんな中で、慰めは「赤い箱 白い箱」。自分は、一番始めにワークショップでやったオリジナルメンバーだったことを思い出した。自分たちで考え、公演ではスタッフの美和ちゃんも一緒に入って作った作品が、あそこまでに仕上がったのだ。

それにつけても、今まで味わったことのない不思議な感覚で終った公演だった。



金森京子

子育ても一段落して、自分だけの時間が持てるようになってから、人生の半分をとっくに過ぎたこの頃になって、もう一度自分て何だろうと考えることが多くなっていました。

今回7月からのワークショップや、11月の三文オペラに参加させていただいて本当に考えれば考える程、素晴らしい経験をさせていただいたと思っています。

今、自分の心が両手でつかまれて振り動かされたような心境です。特にイッキーさんには、演劇の楽しさを沢山教えてもらったことを本当に感謝していています。イッキーさんの演出で、目の前でみんなの表現がみるみる変わっていく様子を見て私は驚き、泣くほど笑い、楽しいと思い、そして自分が元気になって行くのを感じました。

イッキーさんが決して怒らないこと、誰に対しても等しく接してくれることも もう一つの驚きでした。そのことを話すと中山夏織さんが「見せるより伝える心を重んじる同じ東洋人として、日本とパキスタンには通じる心がある」ということを話して下さったのが印象的でした。

舞台は自分になり精一杯やったつもりで、それなりの手応えも多少なは感じることができたと思っていました。しかし後でビデオを見て自分にはパワーがまだまが足りないんだと感じました。それが生き方にも反映しているのかしら?

吉川さんが色々と言って下さっていたことが、今さらながら腑に落ちた気がしました。
今後ともえずこシアターとの出会いを大切にしていきたいと思います。


えずこシアターのホームページ
http://www02.jet.ne.jp/~e-t/





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