UZU・UZUインタビュー14

舞台の役者は、全員がプロ。
舞台は、それだけ重みがあります。







藤田まこと

 

2000.9.7
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2000年9月7日に開催した「鉄道員」公演。
役者としての誇りとフッとこぼれ落ちる人間性を
垣間見させてくれました。

Q:役者の道に進んだきっかけは?

私の父が無声映画時代の俳優でして、古い話になるんですが、GHQの通達で、時代劇のいわゆるチャンバラはまかりならんという時代が2〜3年あったんです。忠臣蔵など敵討ち映画なんかはとんでもなく、映画産業が停滞していた時期が戦後あったんですね。昭和25〜26年ぐらいまでは、時代劇が撮れなかったんです。そのころ時代劇の俳優は、みんな舞台に立って地方を回っていたんです。私が高校1年のとき、夏休みに親父にくっついて地方巡業へ10日間ほど行きました。そのときは、裏方で回ったんですが、それがきっかけでこの仕事をするようになったんです。新聞などに俳優と書かれるようになったのは、昭和44〜45年ごろからでしょうか。最初コメディ系の舞台に上がっていたということで、それまではタレントと書かれてたんです。私がお笑いの世界で感銘を受けたのは、お亡くなりになりましたが、「中田大丸ラケット」という名人や「夢路いとし・君こいし」とういう漫才コンビがおられまして、その方たちと一緒に仕事をするようになって、笑いの本質を知ることになったんです。僕は、大丸さんのことを大丸師匠と呼んでたんですが、何百回、何千回とやってるネタでもきょう初めておろしたネタのような新鮮さをステージの度に覚えたものです。歌舞伎などの伝統芸能は、とにかく形どおり、芸の本質を型において先代がやってたことを本質的に大事にする。一方落語、漫才というのは、今日生きてること、そのときの呼吸で芸をする。何千回やっても生き物のごとく毎日違ったところがあるし、それでいて、きっちり時間でおさめていくんです。その世界で、笑いの真髄をこの目で見て、今はとても役にたっています。その後、役者として舞台に立つようになってからは、段々責任をもってやるようになっていったんですが、僕は欲張りな方ですから、いろんな役をやってみたくて、たくさんのジャンルの芝居をやるようになったんです。テレビの方は、スポンサーがついてますから、自分がこんなことをやりたいと言ってもなかなか自由にはやれないものです。

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▲幌舞の駅舎で、乙松(藤田まこと)が
 責め立てられるシーン。
それから、今はテレビ局のほとんどが守りの姿勢に入っちゃっていて、24〜25年前までは、地方局が毎年1回お金をかけて番組を作り、地方文化の担い手だという勢いもあったんです。だけど、何を作ってどれだけ儲かるかということが段々定着してしまったもんですから、お金をかけて視聴率の悪い番組は作らないでおこうというふうになっていっちゃったんですね。そのころ私が出演してた「てなもんや三度笠」では、すごく立派なセットを30分の番組収録のために作ってすぐ壊してしまうんですが、もったいない話です。今はもうできませんよ。テレビドラマだってそうした傾向があるかも知れませんね。

Q:舞台とテレビ、そして映画をやってみてどんな違いがあると思いますか?

本質的に違うんですが、例えばテレビの場合は、役がついてない通行人というのがあります。いわゆるエキストラを専門に扱っている会社がありまして、そこから派遣されてくるんです。つまり素人さんなんですね。でも、舞台の場合は、素人は絶対に上がれないんですよ。後ろを歩いている人も、一言セリフを言う人も全員プロなんです。それだけの違いですね。だから、長年苦労してる役者さんもいて・・・。舞台は、それだけ重みがありますね。映画もテレビも監督さんの世界です。映画撮るときは極端な話、素人さんでもすぐ1本でスターになれます。監督さんしだいでは、そうなれるんですね。でも、舞台ではなかなかそうはいきませんよ。

Q:今、円熟の時期といっていいかと思うのですが、今一番やってみたいことは、何ですか?

未完成というんでしょうか、今まで演じてきた中で、まだ完成されていない舞台の作品が2〜3本あるんです。ここ数年は、それを一つ一つ演じたいと思っています。再演の日程もほぼ決まっています。将来的にやってみたいことは、「その男ゾルバ」の再演や「ベルリン天使の歌」(ドイツ映画)のミュージカル版をやってみたいですね。それと浅田次郎の新作「すいばれ」を一人芝居というか、一人立体落語という形でやってみたいなと思っています。

Q:趣味、あるいは時間があるときはどんなことをされていますか?

パチンコでしょうね。今もホールの前にパチンコ屋があったので、行こうかと思ったのですが・・・。時間もないからスタッフから止められまして・・・(笑)。実は、これまで2、3機種パチンコ台を制覇していまして、今度必殺仕事人のパチンコ台ができるというので、それも制覇しなければと思っています(笑)。

Q:お客さまへのメッセージがありましたら、お願いします。

鉄道員(ぽっぽや)」の原作を読んでいる、あるいは映画を見ているお客さんもいらっしゃるでしょうし、そうでないお客さんもいると思うのですが、観ていただければ、この舞台がいかによく作られているか分かるはずです。ぜひ、舞台と組み合わせて原作や映画を観てほしいと思います。

-ありがとうございました。

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▲北はずれの終着駅で、優しい奇跡が・・・。死んだ娘が乙松に会いに来ていたことを悟った感動のラストシーン。

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