出演者・観客総勢1,400人、
3時間を越えるステージでえずこの10週年を祝う。


2月17・18日本番当日、初日の午前中は少々ぐずついたものの、二日間ともえずこの空は晴天に恵まれ、まるで太陽までがえずこホールの10周年を祝ってくれているようであった。

きむらとしろうじんじんは正面エントランスの外、南側広場で住民のスタッフと共に、嬉々として茶碗を焼きお茶を点て続けた。じんじん野点の魅力はたくさんある。

まず、陶芸の工房を路上の最前線まで持ち出し道行く人とコミュニケーションすること。通常何時間もかかる窯焚きが20分で終了し茶碗が完成、しかも楽焼特有の窯変まで楽しめ、焼き上がったお茶碗でその場でお茶を楽しめること。そして何よりも妖艶なメイクと衣装で限りなくやさしい心遣いのきむらとしろうじんじんと、ほのぼのと温かい会話が楽しめること。

2日間にわたってえずこホールの南側広場は、住民スタッフが知恵を絞り心を込めて手作りした「こたつ屋台」と「焚き火屋台」が小春日和の雰囲気を醸し出し、野点屋台の妖艶な雰囲気と相俟って、不思議に温かい空気がその一体を取り巻き、訪れるお客さんをそこはかとない優しさで包んでいた。


いよいよ公演の開場時間。正面入り口でパンフレットを来場者自身が折りたたみ(これも住民参加型)、温泉タオルもらって会場内に入ると、お客さんを出迎えるのは住民スタッフと藤浩志が製作したブルーシートと新聞紙製の緞帳。ゆらゆら立ち上る湯気が映像によってプロジェクションされまるで銭湯に足を踏み入れたようだ。

そしてお客さんが三々五々客席に着く中、住民出演者たちが空き缶などで作った手作り楽器を奏で会場内をゆっくりと巡っている。「環楽器による音楽」である。これは空き缶の缶と環境音楽の環を引っ掛けたタイトルになっている。なかなか心にくい導入部である。


さて、スペクタクル映画のテーマ曲のような勇壮な序曲とともにPart1音楽劇、第一音泉の幕が上がった。演奏はえずこウィンドアンサンブル。そしてその軽快な演奏をバックに「ママとパーテルル予告編」が始まった。それは予告編の名のごとく本編とは全く関係のないシークエンスで、映画の予告編よろしく、切り取られたおいしいシーンがアップテンポで小気味よく展開しあっという間に終わった。これから何かが始まるぞという予感たっぷりである。


第二音泉の「幻覚の森」は、モチーフにしたシェイクスピアの「夏の夜の夢」の設定が残ってはいるが原型は留めていない。しかも狂言回しとして登場する倉品の気違い演出家は、流れを分断し出演者を混乱させ破綻に追い込みながら、寸前のところで絶妙のバランスを維持し緊張感のある舞台を成立させている。

そしてこの幕のハイライトは第4楽章「光の広報」。えずこウィンドアンサンブルが舞台で演奏し、その音に呼応するように二階席の白石女子高校吹奏楽部の演奏が被り、壮大な音楽のキャッチボールを展開する。観客は前から押し寄せる音と二階から降ってくる音に包まれ、まるで宇宙空間にでもいるような圧倒的な音の流れに包まれる。微妙な音のずれ、不思議な間合いは、計算されない絶妙な音空間を作り上げている。


Part2はレクチャー協奏曲。第三音泉「三つの動物レクチャー」である。一つ目の動物は「タヌキとキツネ」。この曲は野村が小学生のときに作曲したピアノ曲で、つくしの会児童合唱団で野村が自己紹介代わりに弾いた曲を子供たちが歌いたいと言い出し、子供たちみんなで歌詞を作った曲。その経過を野村が心から嬉しそうにレクチャーする。そしてつくしの会の子供たちによる合唱。擬音語で埋め尽くされたその歌詞は、不思議なリズムと音の響きを生み出し、子供たちのいきいきとした歌唱によって素晴らしい合唱曲に生まれ変わった。

二つ目の動物は「たけやぶた」。ニセノムラが、民俗学のフィールドワークで発見した不思議な「たけやぶた族」の話をまことしやかにレクチャー、その再現劇が展開される。た・け・や・ぶの4文字だけですべての台詞と歌詞が構成されたステージ。

ミニマルミュージックのように、あるいは民族音楽のトランスミュージックのように単純な台詞と音楽が繰り返えされ、徐々に高まっていく。その高まりと共に出演者たちはどんどん舞台を降り客席と一体になっていき、大火事「たけやぶやけた」で大団円を迎える。そしてつくしの会の子供たちによる美しい「たけやぶレクイエム」の合唱で幕。

三つ目の動物は「やせ犬」。藤浩志がパプアニューギニアで本当に体験した話を、藤が当時パプアニューギニアで撮ったビデオと、白石女子高校吹奏楽部、ワークショップバンドの演奏による「幻覚協奏曲」をバックにレクチャーする。そこに藤が製作した木彫りのヤセ犬と出演者たちによるダンスが絡んでいく。

話も曲もダンスもばらばらに作られたものであるにもかかわらず、すべてが藤の話の結末へ向かってすごいエネルギーで収斂していく。クライマックス、矢内原の振り付けが冴え、ヤセ犬たちは客席通路を通りホワイエまで抜け出していった。「何でもないものが凄いものに変化する、それが美だ」という藤の言葉が余韻となって残る。


Part3は第四音泉、ワークショップ交響楽、楽曲はギター曲がメイン。ワークショップ参加者、大河原商業高校ギター部が、ワークショップで作り上げた曲、詩のような台詞で、演劇・ダンスを展開する。大商ギター部は演奏にダンスの振りをつけ、演劇的シークエンスを加えた。

「弾けないギターアンサンブル」は、ギターを弾いたことのないワークショップ参加者が弾くギターとダンスで構成された不思議な舞曲。ほとんどダンス経験のない参加者に短時間のうちに矢内原が振り付けた動きは出色である。倉品の演出も随所に光っている。


第五音泉は「祝宴」。ここは出演者も観客も一緒になってえずこホールの10周年をお祝いする広場のような宴会場。ステージ上の幕、吊りモノがすべてとばされ、万国旗ならぬレジ袋で作った長尺の旗が会場内に張り巡らされ、舞台裏が丸見え、客電を点けたの状態での祝宴である。

祝電披露のパフォーマンスを皮切りに、柴田町立船迫中学校、e☆GG、えずこヴァイオリンアカデミー、えずこ男声合唱団、えずこギターアンサンブルが日替わりで出演し、和やかな雰囲気の中祝宴の演奏を展開した。

また、プレ公演の最後を締めくくった「ほうこうざい」を出演者全員で歌い踊った。その中には、さまざまな理由で本公演に参加できなかった10人の晴れやかな笑顔も混じっていた。最後は一本締めならぬ一本はじめ、これで終わりではなくここから始まるという思いを込めて、全員でレジ袋を膨らまし大きな音をたてて割り終幕となった。

 
 
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