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「かえっこバザール」「えずこ野点」
関連イベントが参加者の裾野を広げる
また、関連イベントとして、11月から1月にかけて「かえっこバザール」が開催された。会場は、えずこホール、オーガ(Orga)(大河原町)、天神小劇場(角田市)の3ヵ所。
「かえっこバザール」は藤浩志が考え出したプログラムで、子供たちがいらなくなったおもちゃを交換するプロセスの中に、貨幣経済を考えたり、リサイクルを実感したり、ワークショップに参加したり、お手伝いしたりする仕掛けが自然に組み込まれている。
今回は、子供たちに絵を描いてもらったり、回収したビデオテープとレジ袋の解体、切り分け作業を手伝ってもらった。そのとき子供たちが描いた絵は、公演のチラシ、ポスター、当日パンフレットにいきいきと飛び跳ねている。また、ビデオテープとレジ袋は、公演の舞台の華やかな装飾素材として大きな役割を果たした。
そして、この10周年企画に予想外で不思議な魅力を付加すべく、野村は舞台の外にもう一つの仕掛けを用意していた。それは、きむらとしろうじんじんの野点である。陶芸家という一般的なイメージを覆す風貌、工房ではなく路上の屋台で焼き上げその場でお茶を点てるという手法、そのどれもが陶芸、お茶に対する我々の先入観を軽々と飛び越えた自由な発想の中に展開されている。
そして、そこには新しい感動と人が出会うたくさんの仕掛けが用意周到に準備されていた。きむらとしろうじんじんが12月に初めてえずこホールを訪れ、住民スタッフとの最初の打ち合わせでまず語ったのは路上での野点の魅力についてである。スライド、ビデオを交えながら、分かりやすく楽しく参加者一人一人に気を配りながら、しかも熱く繰り返しその魅力を語った。
いったいこれから何が起こるのか大きな期待と少しの不安を抱えた住民スタッフたちは、まずじんじんの情熱に引き込まれ、それからじんじん式野点の不思議な魅力にどんどん引き込まれていった。開催に向けた野点ミーティングは5回6回と回を重ね、スタッフがスタッフを呼び、最終的には37人が参加、舞台スタッフを遥かに上回る人数となった。この参加人数だけでこの企画は既に成功したともいえるが、更に、住民スタッフから、焚き火屋台、こたつ屋台という企画を生まれ、本番へ向けて期待と妄想がどんどん膨らんでいくことになる。
編曲、編劇、編振、
楽しく、新鮮で、前衛的な舞台づくり。
1月20日、野村誠、倉品淳子、矢内原美邦の3人が初めて揃い、公演へ向けた作品作りが始まった。
野村は作品作りに当たり参加者に次のように説明した。
「音楽を作るように舞台を作ります。音楽にある、作曲→編曲→演奏 というプロセスをあてはめ、作劇→編劇→上演 振付→編振→上演 という風に、編曲(野村)、編劇(倉品)、編振(矢内原)をやっていくという考え方です。また、ある完成形を目指すのではなく、日日updateしていきます。全体を通して、コンサートとしても、演劇公演としても、ダンス公演としても観れて、しかも、そのどれでもないものになるはずです」つまり、これまで作ってきた4幕の作品を素材ととらえ、総合演出の3人が大胆に再構成し毎日作り直していくということである。
翌日から、野村はそれら4幕の素材のあるものは大胆に切り捨て、あるものは針小棒大に膨らませ、またあるものには全く斬新なアイディアを盛り込むなどして、編曲、編劇、編振の作業を繰り返した。通常、舞台は仕上げ段階に入ると大幅な修正、変更はせず、細かな修正や作り込みの作業に入っていく。
しかし、野村はそうはせず、毎日大きく修正し、新しいアイディアを盛り込み、変更を繰り返した。それは、作品が最も新鮮な感動に満ち溢れているのは、その作品が立ち現れたときであり、上演を繰り返すことにより、表現は安定していくが逆に新鮮な感動は失われていく、というアーティスティックな感性がそうさせているように思える。
普通、そのようなやり方は出演者に大きなストレスを与える。せっかく覚えた台詞や振りが一からやり直しになってしまうからだ。しかし、参加者にそのようなストレスはなかった。それは、野村が通年で開催してきたワークショップ同様、「皆はどう思う?何をやりたい?」という言葉を常に投げかけ、その反応を注意深く受け止め、細かく心配りをしながら再構成していったからである。
参加者は、常に自分の意見、考え方に配慮しながら大胆に進む野村を信頼し、ストレスなく自然体の中で、住民が創る舞台としては前例がないほどに楽しく、新鮮で、しかも前衛的な舞台づくりに引き込まれていった。
その一連の流れを見て、藤浩志は、「これはもはや住民参加型ではなく、住民主導型だ」と野村に話した。
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